足音が近づいてくる。今日も人助けと称した人の集まりが俺の静かな空間を邪魔しに来る。俺は溜息を付いた。
 「もう少しちゃんとした生活がしたくありませんか。僕等は君を汚いだとか可哀想な人だなんて思っちゃいません。君にもっと快適な場所移ってもらいたいと思ってるだけなんです。」
綺麗事を言ってくる。でも、ここでの生活に慣れているし、別に不便だなんて思った事も無い。
 「はあ、そう言ってくれるのはありがたいんですが、僕はここでいいと思うので……」
大体相手の反応は予想が付く。
 そんな時、橋の上から一人の女の子が川辺の坂道を駆け下りてきた。年は俺と同じ位、大体13歳位か。背はあまり高くはなく、無邪気な目をしている。それを見て俺の敵である集団のおじさん一人がその子に声をかけた。
 「お譲ちゃん、今はちょっと上に上がっててね。今ちょっと話をしてるから。」
結局、こいつらは俺のことを見栄えの悪い障害物位にしか見ていないんだろう。意地でもここは離れない。こんな収集車のゴミになってたまるか。
 しばらく会話が続いたが、結局そのグループは、ゴミを見るような目で俺を睨みながら帰っていった。最近は何があるわけでもないのに毎日のようにここを離れるように説得される。その度ヒヤヒヤしながら応対してるのだが、そろそろ危ない気がしている。
 何故か小さい頃に両親と生き別れ、家まで失ってしまった俺には、一人での生活が一番馴染むんだ。いずれ自分の力でこの橋の上に出て暮らす。それが今の一番の思いだ。その為にも今あんな意味の分からないのに連れて行かれるわけにはいかない。