起き上がりたくない。頭が痛い。筋肉痛で体中が痛い。腹が痛いのは雨を直に受けたからだろうか。テレビなんて無い、俺の部屋。いつだって目に映るのは雲の流れと、青い空だけ。正方形に切り取られた、俺の空。
ここがどこなのか、分からない。今では見慣れた壁、布団、そしてこのトランシーバー。何一つ変化はない。俺にとって目の上に浮かぶ青と白だけが、時の変化を感じさせてくれる。
自分が誰なのか、分からない。外から聞こえる声の主も、自分の顔さえも、分からない。俺はどうやってここに来たのか。どんな人間なのか。俺の存在がどうあるべきなのか――
する事は何も無い。一日こうして寝転んでいる。ただひたすらに空を眺めて。ふと気付くと置いてある食事を平らげ、唯一の変化を楽しむ。何故、俺はこんなところにいるのか。なぜ、俺は生きているのだろうか。俺に生きている意味などあるのだろうか――
トランシーバーに目をやる。俺の人生を司る何かしらのように、ぽつんと佇んでいる。電源は入ったままだ。
ふと一角に目をやると、部屋の中に食事が置かれている。どうやって置いたのか、どうやって部屋に入ってくるのか分からない。どこが入り口で、出口なのだろうか。だが、結局のところそんなことには興味が湧かない。俺はただ、そこにあるものを全部食べる。
食事を終える。いつの間にか食器は、どこかへなくなってしまう。瞬きをするだけの、ほんの一瞬の間に。
俺は何をしているんだろう。ふとそんな疑問が浮かぶ。だが、自分によって、それはすぐに抑えられ、消されてしまう。外への憧れでさえも。
どんな感情でさえも、たちどころに萎んでしまうのだ。ただ一つ、切り取られない綺麗な空を、大きく白い雲を、見てみたいという思い以外は――